特集
2025年8・9月号

大阪・関西万博で信州の魅力を発信!

  • 長野県観光スポーツ部観光誘客課 蓬田豊

大阪・関西万博について

去る2025年4月13日、大阪市此花区の夢洲にて、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)が開会となりました。
1970年に開催された大阪万博から実に55年後、再び大阪が舞台となった今回の万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、未来社会の実験場「People’s Living Lab」をコンセプトとして掲げるとともに、世界各国や国内企業、著名なプロデューサーが作り上げた個性豊かなパビリオンなどが会場を彩り、国内外から多くの方が訪れている状況です。
このような世界的な祭典で、この度、長野県の多様な魅力をPRするブース出展を行いました。今回は、出展に至る経緯や取組内容などをご紹介させていただきます。

大阪・関西万博への出展の経緯

大阪・関西万博の開催がにわかに話題となりはじめた2023年の春、万博の主催者である「公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会(以下、「博覧会協会」という。)」から、会場内のイベント施設にて、自治体のブース出展の希望照会がありました。
県としては、

  • (民間旅行会社の調査結果によると)関西圏から長野県への宿泊旅行者は全体の10%程度と、マーケットとしての伸びしろがまだまだあると考えられること
  • (博覧会協会の推計によると)期間をとおして2,800万人以上が来場する世紀の祭典であり、出展によるPR効果が相当程度見込まれること。
  • 2024年3月の北陸新幹線敦賀延伸と今回の万博を契機として、県としても関西圏との交流や誘客を強化する方向性を固めたこと

などを背景に、2023年6月末に万博への出展を決定、博覧会協会へ企画書の素案を提出しました。
この時点では万博の全体像も見えておらず、長野県としてどのような内容をPRするかも決定していなかったため、その後ブースの詳細を検討していく作業に入ることとなります。
なお、博覧会協会との調整の結果、長野県が出展する期間は2025年8月27日(水)から8月31日(日)に、催事施設は西ゲートゾーンにある「EKPOメッセ“WASSE”」の北側に決定しました。当該施設は広さ2,000㎡を有しますが、後述のとおり、他の4自治体と同時出展となるため、長野県はその一角である約200㎡を割り当てられました。

出展に向けたブースコンセプト及び内容の検討

出展にあたっては、来場者に長野県の魅力(雄大な自然環境等の長野県の強み)の何を伝えるのが最も印象づけることができるだろうか(コンセプト)、どのような属性の方をターゲットとして位置付けるべきか(ターゲット)、それらを踏まえてブース内でどのようなコンテンツを提供すべきか(コンテンツ)といった戦略をしっかり定めた上で、ブースの内容を検討していく必要があると考えました。
それらの検討にあっては、過去に国内で開催された万博(愛・地球博)に携わったことのある方や、県内でその地域ならではの魅力を活かした観光コンテンツの創出に取り組んでいる方を外部アドバイザーとして迎え、意見を伺いながら内容を詰めていきました。
外部アドバイザーからは、

  • 長野県の最大の魅力は3,000メートル級の山々に囲まれた迫力のある自然、山岳高原の爽やかさ、四季折々で表情が変化する自然であること。
  • 真夏の万博への出展ということで、猛暑の大阪にいながらも長野県の爽やかな自然を五感で体験いただくようなコンテンツであれば魅力を伝えやすいのでは。

など、コンセプトをはじめとした基本的な部分への助言はもとより、

  • よくある試食や試飲、伝統工芸などの展示のように、会場に並べられているものを来場者が見るだけでは印象に残らない。
  • 「見るだけ」や「食べるだけ」ではなく、ブース全体を使って五感に訴えかける仕掛けをし、来場者へ長野県の印象をしっかり植え付けられるような内容とすべき。

といった具体的なブースレイアウトや提供するコンテンツに対してもアドバイスをいただきました。

それらの意見を踏まえ、県では補正予算を計上し、「大阪・関西万博 長野県 自治体参加催事基本計画」を作成し、以下のとおり出展テーマやコンテンツを設定しました。

まず、出展テーマ(コンセプト)を「『五感で感じる信州まるごと体験』~真夏の大阪で信州・長野県の涼しさ・爽やかさを体感~」としました。言うまでもなく五感とは、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚のことであり、全身で信州・長野県を味わっていただくことで、来場者への高い訴求を目指すこととしました。

次に、ブース内で提供するメインコンテンツとして、迫力のある長野県の自然の映像を360度+床面に投影するとともに長野県らしい自然の香りを演出する「イマーシブ(没入)空間」を作り上げることとしました。

加えて、視覚(映像)及び香り(嗅覚)以外に訴求するコンテンツを提供するスペース(芝生広場)も設け、

  • 信州から運び込んだ実物の「雪だるま」の展示(視覚、触覚)
  • 信州産日本酒・ワインの試飲(味覚、嗅覚)
  • 二次元コードを読み込むとスマートフォン上にガイドが現れ、信州の魅力を解説するバーチャルガイド

などを実施することといたしました。

県内企業・団体の皆様の協力

長野県の魅力を広く発信するため、県内の企業・団体の皆様の協力が不可欠です。
イベント開催に精通した代理店の存在はもちろん、大迫力の映像を投影するには専門の機材やシステムを取り扱う方、雪の展示のためには山の上に雪を残している自治体やスキー場、日本酒やワインを提供するに当たっても酒蔵やワイナリーの協力はもとよりその魅力を解説するソムリエの存在など、多くの方の協力なしにはこの出展をなし得ることはできません。
具体的なブース内容の検討と並行して、県及び受託事業者から各企業・団体へ協力のための相談をはじめました。
その結果、メインコンテンツであるイマーシブ空間に投影する映像の技術や機材提供については、県内屈指のプロジェクション技術を有し、松本城のプロジェクションマッピングのプロデュース・制作にも携わるセイコーエプソン株式会社に協力をいただけることとなりました。
また、展示する雪だるまの基となった「雪」や「雪だるまの型」は飯山市と野沢温泉村から協力をいただいたほか、試飲に使用する日本酒・ワインの選定はそれぞれ長野県酒造組合と長野県ワイン協会に協力いただきました。
さらに催事本番、信州・地酒アドバイザーやNAGANO WINEアンバサダーにブースへ詰めていただき、信州産日本酒・ワインの魅力を語りながら試飲の提供をいただきました。
JA全農長野様におかれては、アンケートへの協力の御礼として、催事の初日に長野県産ぶどう3品種「ぶどう三姉妹🄬」(ナガノパープル・クイーンルージュ・シャインマスカット)のサンプリングとともにブースを装飾する生花や果物を、須坂市にある岡木農園には試飲ブースに造作した「ぶどう棚」に吊るす本物の「ぶどう」を提供いただきました。
このように、多くの皆様のお力を借りて、来場者に対して効果的に長野県PRが図られたと考えております。

同時出展都道府県との連携や出展ブースと連動したPR活動

長野県の出展期間と同時期に、石川県・愛媛県・千葉県、さらには福岡市を中心に西日本の主要な市町村が合同で出展する「西のゴールデンルート」が同じ会場で出展を予定していました。同時に出展する自治体同士の連携を図り、基本的な情報などを共有しながらブースを作りあげていくことで、そのPR効果をより高められるのではと考え、長野県が声をかけ自治体同士の打合せを適宜実施しました。
それにより、同時出展自治体間の情報共有や連携が図られ、本番に向けて円滑に準備を行うことができたほか、本番にはキャラクター同士のコラボレーションといったことが実現しました。
併せて、多くの方に長野県ブースをご覧いただくため、万博出展を県内外にPRする広報活動を実施しました。
具体的には、ブース出展をお知らせするチラシを作成し、大阪市内のメディアや企業、関西圏でのイベントに留まらず、県民ホールや県内メディアへも広く配布するなどPRを行いました。結果として、NHKとSBCにはニュース番組で取り上げていただいたほか、信濃毎日新聞の一面で万博出展をPRいただきました。
また、大阪を拠点とするラジオ局「ラジオ大阪」の番組に、長野県永久観光大使 峰竜太さんや阿部知事が生出演し、長野県の魅力と共にブース出展をPRいただきました。番組は出展前日の8月26日には峰さんが、出展日初日である8月27日には知事と峰さんが一緒に万博会場内のブースから生出演し、広く関西の皆さまに出展のPRを行ったところです。当日ブースを訪れた方の中には、「ラジオを聞いて来ました」という方もおり、一定のPR効果を感じています。

催事出展本番の様子

そして本番、8月27日(水)から31日(日)午前中まで、西ゲートゾーン近くのEXPOメッセ「WASSE」へ出展しました。
出展初日である8月27日(水)は、阿部知事と長野県永久観光大使峰竜太さん、長野県観光スポーツ部次長、そして長野県PRキャラクター「アルクマ」に参列をいただき、テープカット含むオープニングセレモニーを行いました。
知事や峰さんにも五感で感じる長野県をPRいただき、初日から好調な集客を図ることができました。特に、信州・地酒アドバイザーとNAGANO WINEアンバサダーによる信州産日本酒・ワインの解説付きの試飲体験は参加者にも好評で、常に行列ができていました。

2日目である8月28日(木)は、国際博覧会担当大臣の視察が予定されていたため、一般来場者数は他の日よりも少なく推移しましたが、担当大臣視察の際にはアルクマのお出迎えや雪だるまの見学、日本酒・ワインの試飲、メインコンテンツであるイマーシブ映像など、ブースのコンテンツの多くを体験いただいたところです。

8月29日(金)、8月30日(土)は週末ということもあり、非常に多くの方にお越しをいただきました。特に、360度+床面へ信州の絶景を投影するイマーシブ空間を見るためにお昼前頃から来場者が列をなしており、約12分間で1周の映像をある人は椅子に座りながら、ある人はミャクミャクの人形と一緒に写真を撮りながら楽しむなど、皆が思い思いのスタイルで楽しんでいる姿が印象的でした。季節毎に映像が切り替わると、歓声が上がるような光景も度々見受けられ、訪れた多くの方に長野県を印象付けられたのではないかと感じています。

また、長野県PRキャラクター「アルクマ」も1日4回(最終日である8月31日は午前中の1回のみ)、写真撮影に応じる「グリーティング」を実施しました。関西でもアルクマ人気は高く、アルクマが登場すれば自然と人が集まり、1日100組以上の方が写真を撮りに来てくれました。8月31日の最後のグリーティングでは会場の外までアルクマがPRに出向くとともに、千葉県のマスコットキャラクター「チーバくん」とのコラボレーションが実現しました。
このように長野県PRブースは大きなトラブルもなく5日間の出展を終え、実に23,000人以上(速報値)の方に訪れていただくなど、大好評のうちに幕を閉じました。

終わりに(今後の観光プロモーションについて)

まずは、今回の催事出展にあたりご尽力をいただきました県内の企業・団体の皆様、催事に携わった委託業者のスタッフの皆様、そして何より来場いただいた多くのお客様に感謝をお伝えしたいと思います。
今回の出展をきっかけとして、関西圏の皆様を中心に多くの方に信州・長野県の魅力をPRできたと感じている一方、多くの予算を投じたこの事業が一過性のものとならないよう工夫をしていく必要があると感じています。
そのため、今回イマーシブ空間で投影した映像は、素材をさらに充実させた上で、以降の催事やイベントでも活用できるようにしていくとともに、催事出展を通じて生まれたつながりを、今後の事業に活かしていきたいと考えています。
特に2年後に控える大型観光キャンペーンであるDC(デスティネーションキャンペーン)は万博出展と同様夏季の実施となります。今回万博で得たノウハウやレガシーをDCに引継ぐとともに、より多くの皆様に長野県の魅力をお伝えし、さらなる観光誘客を図ってまいります。