村の中心を山々を縫うように蛇行して流れる天竜川は、まるで龍の胴体の様。その姿にふさわしく、天龍村は「龍の隠れ棲む里」とも称される、風光明媚な地域です。村の面積の9割以上が山林で占められ、渓谷の合間に小さな集落が点在する様子は、絵画のような美しさがあります。
この自然豊かな風景こそが、天龍村の最大の魅力です。川沿いの道を走っていますと、時折、車を停めて天竜川と飯田線を一緒に撮影しようとカメラを構える方々の姿を目にします。また、夏になると村鳥であるブッポウソウ目当てに、全国各地から愛鳥家や写真愛好家が訪れます。朝早くからシャッターチャンスを狙う姿が見られるのも、今では村の風物詩のひとつです。天龍村観光協会で販売しているブッポウソウのポロシャツやサコッシュなどの多種多様なグッズも大変ご好評いただいております。
しかし、私たちに多くの恵みを与えてくれる自然は、時として厳しい顔を見せます。全国的に集中豪雨や台風による土砂災害が頻発している昨今、天龍村でも令和2年7月に大規模な崩落が発生し、安全な通行が困難となる事態に見舞われました。以降、村民や関係者は狭く危険な村道を長期間迂回路として利用せざるを得ず、不安と不便を抱えた日々が続きました。

そのような中、令和5年4月に長野県事業として掘り進めてまいりました国道418号「福島トンネル」が開通し、本年には取付工事も無事完了、ついに安全かつ円滑な交通路が確保されました。まだまだ急峻で狭隘な道も残っていますが、「おきよめの湯」などの重要な観光施設へのアクセスが大きく改善され、村民はもちろん、観光客や村外からの来訪者の増加も期待されています。また、同じく国道418号線上で工事が進められている「足瀬トンネル」が開通しますと雨量規制や土砂崩れの多い区間の交通が格段に安定します。
この道路整備は、単なる利便性の向上にとどまらず、地域全体の活力や安心感にもつながるものです。今後、三遠南信自動車道やリニア中央新幹線が開通すれば、天龍村を通る国道418号の役割はますます重要なものとなっていくでしょう。
美しい自然と共に生きる私たちの村にとって、安全で安定した交通インフラの整備は欠かすことのできない基盤です。先人たちが大切に守ってきたこの地の魅力を、これからも丁寧に磨き、次の世代へと受け継いでいけるよう努めてまいります。
